ハラル・ビジネスの不思議
- 2019.05.31 最終更新日
- 2019.06.03
- 社会・政治
ちょっと前、いろいろな会社からハラル商品の新規立ち上げ、登録について尋ねられた時期があった。多分2016~7年位だったと思う。ハラル協会的なのを立ち上げたという人もいた。なんでこんなにハラルが流行ってるんだろうと疑問だった。「ビジネス」っていう響きが中身がない空虚な感じをちょっとだけ醸し出していたのを憶えている。
ドバイに住んでいた頃からハラルというのは知っていたが、自分はモスリムでもないし特に気にしたことはなかった。一番最初に意識したのは和牛の中近東への輸出案件で屠殺の方法だの、施設だのが話題になった時だ。モスリムの祈りを唱えながら、痛みをなるべく牛に与えずに殺す施設を日本に作ったという話だったと思う。
2010年頃から日本食の中近東への輸出をしているが、輸出商品に対してそれまでハラル認証を取ってくれとかいう話は聞いたことはなかった。彼らの要求はアルコール無添加(許容範囲がある)、豚肉または豚肉由来の原料を使っていないこと。こういったシンプルな決まりだった。養殖魚の餌にブタ由来を使っていないこと、とか細かい決まりもあったが、日本茶やパンにハラル認証を求めることはなかった。お茶やパンの製造工程にブタ由来やアルコールが使われることはほぼないだろうし、あってもそこまで管理できない。湾岸諸国は食品をほぼ輸入に依存しているので、そこまで厳しくすると価格が上がり対応出来ないという理由もあるかもしれない。
モスリムの友人(インド人)に聞いてみると、お茶や野菜にハラル認証は必要ないのでは?という意見だ。主に気にするのは食肉類とせいぜい魚類、それと豚由来、アルコールだ。いろんな人がいるだろうけど、私の周りはモスリムといっても旅行したらビールは飲むし、食べ物も直接豚肉を食べたり、豚骨スープを飲む以外は大抵気にしない人が多いように思う。酒好きのモスリム結構多いです。国出たら思いっきり楽しむよ!みたいな感じの人。
ムスリム不在のおもてなし、日本の「ハラールビジネス」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10169.php
ニューズウィークの記事にかなり詳しくハラルビジネスが解説されていて役に立った。しかし神との人との契約とか、豚肉由来は本来許されるべきでは?とか一般の日本人には判断しようのない問題もある。しかし1857年の「セポイの反乱」のきっかけが豚由来の防湿油がエンフィールド銃の薬方に使われているという噂が流れたのがきっかけであり、この当時から豚由来も禁忌であったのでは?とも思う。
一度エジプト人の女性に何故豚をイスラムで禁止しているのかを聞いてみたことがある、彼女は国際的な経験が多い人なんだろう。戒律で決まっているからとか、コーランに書かれているからではなく、科学的に解説をしてくれた。それは「顕微鏡で、どんどん細かく豚の細胞を見ていくと、小さな細菌がいて、とても有害だ、それを避けるのは自然だ」ということだった。その細菌は加熱すると死滅するとか、イスラム圏以外の膨大な数の人間は毎日の様に豚を食べているが、とても健康に生きているということは説明してくれなかった。
ハラル・ハラムというのはとても宗教的な問題で、その人個人の認識や、腹積もり(どこまで宗教熱心か)でも変わるものだ。日本の一時のブームの「ハラル対応」というのは「多言語対応」に響きがとても似ている。
なんだかわからないけど役所や団体が推進している外国人用の一律の対応。とても表面的なものに見えて仕方ない。外国人とのもっと個人的だったり、商売のやり取りの歴史。自分の顧客だからこうすればもっと喜ばれるだろう、友達だからこうしてあげよう、みたいな感情のある歴史の積み重ねが少ないように思う。ブームのように一過性で社会の表面に流れるだけの油のようで、時が経てば跡形もなくなってしまうものに見える。
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