いわんや、おや

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私は今、とてつもなく憤りを感じており候。
今日は珍しく早く会社を出たおかげと、帰りの道中に酒の誘惑に屈しなかったことと、それから、途中の本屋で収集途上の「おぼっちゃまくん」の購入を我慢して、勤めてストイックに帰路の歩を敢行した功績から、23時には自宅に帰ることができた。
…と、ここまでは非常によかった。
今週の私は家に到着しても、幾らかのToDoを帯びており、家に着いたからといって、ソッコウで好きなことして寝るわけには行かなかったのだ。
さて、PCのパワーを投入してからの起動時間と、モデムの電源投入から回線が開くまでの数十秒間を無駄にしたくないと考えた私は、ベッドの横の棚の書類から、資料を引っ張り出すべく、ガサガサと手を動かしていた。
その足元には、刹那的な重要度の低い書類をまとめて乱雑に入れておくための、木でできた箱が足元にあるのだが、私はいつものようにカードの利用明細やら、用の済んだFAX用紙やらを、その箱に押し込み、再度目線を上に向けようと思った瞬間、私は時計も気にせずに大声で悲鳴をあげてしまった。

悲鳴の瞬間というものは、これは不思議である。
「理解(状況の把握、認知)」よりも先に悲鳴というものは発生する。
その瞬間における思惟とは、以下の如しである。
「うるさい!何故?叫んでるから。俺が。おちつけ、何だ?なんだ?」

果たしてその理由であるが、私の両の眼(まなこ)は一点に焦点を合わせており、その対象物体こそが惨劇の根源たる威厳を帯びて、不気味に鎮座している「それ」なのであった。

私の脳内中央にある海馬が自身のニューロンネットを辿り、その物体が「ムカデ」と呼称される昆虫だという事実を閃光の瞬きのような思索のなかに見出すことができたからといって、一体この状況をどれほど好転させてくれただろうか?
木箱の中で乱雑に立ち並ぶ不安定なる書類の一枚に鎮座する「それ」は、
私の視線を感じてか、微動ダにせず演算処理を行っているようである。
紙の角という大地に這う「それ」を固い鈍器で叩いたところで何の効果があろうか?
そもそもそんな勇気も、正直私にはなく、蛇に睨まれた蛙の気持ちを一身に感じながら学習し、横目で電話を見る。
(一瞬だけ目を離し、手を伸ばせば電話が掴める!)
電話を取った私は、高校生の妹に電話して、家中の殺虫スプレーを集めさせた。
そうこうしてる間に、「やつ」は雑踏の中に紛れて逃走を計り、不意をつかれた私は、予想よりも早い「やつ」の動作にパニックを起こし、やはり時計も気にせず、お笑い芸人のホクヨウのような悲鳴をご近所にエコーさせてしまった。
私は、女郎宿に立て篭もった裏切り者の元締めチンピラを始末するマフィアのショットガンさながら、はたまたガトリングガンを片手で持ちながら乱射したアーノルド・ショワル・ツェネガーの「うおおおおおお!」という、あのアドレナリン分泌時における鳥肌が立つような高揚と恍惚感の中で殺虫スプレーを視界の隅から隅まで放射し、煙る前線を出来るだけ広く平均的な視界を保って、視覚と聴覚を研ぎ澄ましながら、背後の木々と同化した。

何度も叫び、何度も敵を見失い、最後に「やつ」に決定的なスプレー照射を食らわせてから、再び木箱の中の物陰に隠れたやつを確認するために、多くの時間を費やして勇気を蓄積し、木箱の向きを変えて、動かなくなった「やつ」を肉眼で確認した頃には、ユウに帰宅から2時間が経過していた。
最後の始末をするべく、ピンセットをかまえた私は、どうしてもピンセットで「やつ」を摑むことができない。
もしも摑まれた感触で息を吹き返したら、どうするか?
触れた瞬間に、あの得意の不気味で早い動作で雑踏に入り込んで行ってしまったら、私は今晩からどこに寝れば良いのか?
再び電話を摑んだ私は知り合いの女子に電話した。
…留守番電話サービスセンター…
すかさず知り合いの北海道に出張中の男子にコールする。
眠い目をこすりながら、ホントによく私を勇気付けてくれた。
感謝してやまない。
戦友の壮絶な害虫駆除体験を受け、再び戦場に立ち向かう勇気を得た私は、意を決して何故か息を止め、ピンセットで、動かなくなった「やつ」を摑み、窓の外から眼下にある「ハナレ」の屋根に「やつ」を放り出すことが出来た。
これからの日々、「やつ」は死体になりながらも、太陽の業火に焼かれ続け、
容赦なく振りしきる雨の日は、全身に雨粒を浴びるだろう。
私は勝利の栄光と疲労を胸にタバコをくゆらかし、時計に目をやると、もう一時半…
私はこの事態に対する怒りで胸が一杯になった。
こうした事柄が、私を無類の春先嫌いにしていくのである。

コメント 4

  1. 玉川乃守少納言
    May 19, 2005 21:14
    いやぁ、大変でしたね…
    わかるわかるその恐怖w

…って自作自演でもしないとホントにレスのつかないブログですこと!
おっほっほっほ!
今回は初めてログインして投稿を行ったが、いつもの冴えわたるコメント文章に比べて、読み手側にしてみると疲れる内容になってしまった気がする。
テクネーもちょっと落ちたかもしれない。

再度読み返してみると、どうせならもっと瞬間を分割した描写を入れて、緊張感の向上に力入れたらよかった気もするな…
大体いつも「落ち」なんて考えないで書く訳でありますが、今回は落ちが出てこなくて、事件の顛末に終始してしまったのもあって、別に嫌いでも無い春先を嫌いにならないとならなくなった次第でしたね。

さてさて帰ろう…
今日も睡眠が足りてなくてつらいや…

  1. 玉川乃守少納言
    May 21, 2005 02:16
    全然関係ないけど、最近大学時代のテキスト書籍読み返してて、
    ギリシャ・ローマの歴史とかいう講義取ったときに買った本読んでたら、無性にソクラテスが好きになってしまった。
    ピュタゴラスは公明党の黒幕みたいな感じだし、弟子のプラトンには武士道が欠落してる感があるし、孫弟子かなんかのアリストテレスなんて俺的にはアンマ詳しくないし、やっぱソクラテスが一番かっこいいね。
    俺なんて死刑になるまで禅問答みたいな嫌がらせに執着できないだろうし、
    頭の中で神様から合図とかもらっても、腰抜けだからコッソリ病院行っちゃうね。
    すげぇよな。
    真のソサエティストってのはソクラテスだね実際。
    こういう精神でもって社会生活営みたいみたいな。

  2. 荒唐無稽和尚
    May 22, 2005 15:38
    自作実演だ、、、
    ギリシャ哲学熱いね~。つっても昔読んだからどんなのだか忘れちゃった。
    ソクラテスってなにした人だっけ、そこらへんにいる人たちに議論吹っかける人だっけ?

  3. yuta
    May 23, 2005 14:06
    メッセージありがとうございました。
    何処にどう連絡すれば良いのかわからなかったため書き込ませて頂きます。Ruelogのデザイン等気に入って頂けた事は大変嬉しく思っております。ただ私の方は一応デザインを生業としておりまして、現在の所テンプレートをフリーで配布する等の事は申し訳ありませんが行っておりません。ご理解頂けると幸いです。それと一応、玉川乃守少納言さまのコメントはプライベートに近い内容なので削除させて頂きますが、今後ともRuelogをよろしくお願いします。