The Eagles, The Last resort とアメリカ開拓史
- 2021.01.19
- 社会・政治
The Last Resort
By the Eagles
She came from Providence
One in Rhode Island
Where the old world shadows hang
Heavy in the air
She packed her hopes and dreams
Like a refugee
Just as her father came
Across the sea
She heard about a place
People were smilin’
They spoke about the red man’s way
How they loved the land
They came from everywhere
To the Great Divide
Seeking a place to stand
Or a place to hide
Down in the crowded bars
Out for a good time
Can’t wait to tell you all
What it’s like up there
They called it paradise
I don’t know why
Somebody laid the mountains low
While the town got high
Then the chilly winds blew down
Across the desert
Through the canyons of the coast
To the Malibu
Where the pretty people play
Hungry for power
To light their neon way
Give them things to do
Some rich men came and raped the land
Nobody caught ’em
Put up a bunch of ugly boxes
And Jesus people bought ’em
They called it paradise
The place to be
They watched the hazy sun
Sinking in the sea
We can leave it all behind and sail to Lahaina
Just like the missionaries did so many years ago
They even brought a neon sign said, “Jesus is coming.”
Brought the white man’s burden down
Brought the white man’s reign
Who will provide the grand design?
What is yours and what is mine?
‘Cause there is no more new frontier
We have got to make it here
We satisfy our endless needs
And justify our bloody deeds
In the name of destiny
And in the name of God
And you can see them there
On Sunday morning
They stand up and sing about
What it’s like up there
They call it paradise
I don’t know why
You call someplace paradise
Kiss it goodbye
先日アメリカ建国、開拓の歴史と感謝祭の話をした時に、この曲を思い出しました。
北米大陸で白人による開拓が進んでいく中で侵略され、殺されていくインディアンと、そのインディアンがトウモロコシを飢えた開拓民に与えたことを感謝する感謝祭。
この矛盾した話と同じ類の矛盾が、この the last resortという「最後の手段」か「最後の楽園」とも訳せる曲の中にも潜んでいて、美しいメロディの中で語られる歪んだアメリカ開拓史の話がなんとも切ない気分にさせます。
歌詞に関しては、和訳が載っているサイトがいくつもあるので、そちらを見て頂くとして、このエントリーで注目したいのはこの曲の中のキーワードです。
冒頭部分の「旧世界の影が支配するプロヴィデンスから彼女は来た〜」という部分。old worldとnew worldというのはヨーロッパ世界と新大陸アメリカ(南アメリカも含めて)という対比で、アメリカのドラマでもイギリスから来た人に「Welcom to the new world」とか冗談ぽく言っているのを聞いたことがあります。またこのProvidenceというロードアイランド州の首都の名前も「神の摂理」を意味するもので、歌詞の後の部分のDestinyと関連するものだと勝手に想像しております。
更に想像を進めれば「 Just as her father came Across the sea」の部分は、海を渡ってきたpilgrim fathers を暗喩しているともいえるかも知れません。母ではなく、父ですからね。
「They came from everywhere To the Great Divide Seeking a place to stand Or a place to hide」この部分はネイティブ・アメリカンが白人入植者と戦う場所、隠れる場所を見つける。the Great Divideの意は「ロッキー山脈」とネイティブ・アメリカンに降りかかる「大きな危機、大きな分裂」の2つの意味だと思います。
そして白人(Jesus people)の入植は進み、行く先々でネオンをつけ、西に広がるフロンティアをパラダイスと名付け、bunch of ugly boxes(醜い箱の様な家)を建てては売り、遂にはMalibu beachに到達します。ロサンゼルスの北側の街だそうです。そして内陸にある砂漠から渓谷を抜け、冷たい風がそこに吹き突きつけます。彼らはアメリカ大陸西岸に至ったのです。
Neonという言葉が出てきます。これはEnlightment(啓蒙)の暗喩ではないでしょうか?キリスト教の神の意志に従って、未開蛮族の土地(フロンティア)に光を照らすのがManifesto Destinyであり、安っぽいneon light を照らし続けて西海岸に至ったという感じがします。”Just like the missionaries did so many years ago”という部分もキリスト教の啓蒙思想を匂わせます。Missionaryはいつでも尖兵であり、スパイ組織なのです。New frontierを目指しハワイ(ラハイナ)に至ることも可能だが、そこでも同じことをするのか?ハワイ王国を併合し、そこをもパラダイスと呼びキリスト教を布教しようというわけです。そして白人の原罪思想や宗教責務、道徳を持ち込み、白人の統治が始まる。
「What is yours and what is mine?」とは土地の個人所有の概念がなかったインディアンの大地に、その概念を持ち込み、大地を切り刻んだ歴史ではないでしょうか?イギリスやフランスが、アフリカや中東に直線の国境線を引いたように。
血なまぐさい歴史と、尽きない欲望を「In the name of destiny and in the name of God」のもとに正当化しようとしている。in the name of Godはわかりますが、Destinyというのは Manifest destinyのことでしょう。
この絵は1872年に描かれた「アメリカの進歩」(Wiki)です。女神が電信線と聖書でしょうか?を持ち、西に向かっています。キャラバンの開拓者と逃げるインディアン、遠方には東海岸に停泊する船と、西に延伸する鉄道が描かれています。西部のフロンティアは暗く文明の光が当たっていません。
アメリカの開拓史を象徴する絵であり、つい70数年前の第二次大戦以前には世界を覆っていた植民地主義を正当化した思想と同根です。アングロサクソン(又は白人)は植民地経営の最適任者であり、文明とキリスト教を未開蛮族に教える義務があり、それが世界を光で照らす(En-lightment)のだと。
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