【コロナウイルス】インドでのロックダウンの現状

【コロナウイルス】インドでのロックダウンの現状

さて日本でも緊急事態宣言が出ました。ここインドでは3月22日(日曜)よりJanata Curfew(人民のための外出禁止令みたいな意味です)という名前でロックダウンが宣言されています。このロックダウンは日本の穏やかな緊急事態宣言とは違い完全な都市封鎖です。時系列を追って説明します。

3/19 22日の日曜日、一日だけのロックダウンが宣言が出された。この時は大都市部、人口密集地だけ。ジムやプールの営業禁止、集合住宅内のジムやプールも使用禁止、バーの営業停止など、レストランはまだ営業ok。

3/22 日曜日当日。なんとなく街が静かです。確かに人が通りに出歩いていない。犬の鳴き声だけが響く。まだこの時点では自主的な外出禁止なので、外を歩いている人もいる、店も開いている。

3/24火曜日。モディ首相によってロックダウンの21日間延長、4月15日までの延長がアナウンスされました。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/03/66e0d97ef19086ac.html

https://www.in.emb-japan.go.jp/PDF/20200324_Coronavirus_(24).pdf

その後の1週間ほどで航空路線も最初は国際線が閉鎖され、少し経ってから国内線も全面閉鎖。ほぼ同時期位に州境も閉鎖されました。

3/23(月曜)と3/24(火曜)、この辺りで一斉に大都市圏から人が出身地の各村へ帰り始めました。バスはサービスを停止していたはずですが、翌日のニュースではバススタンド(新宿のバスタみたいに長距離バスが集まる場所)は夜通し人で溢れ、屋根に乗ったり、ぎゅう詰めの状態で、または短中距離バスを何本も乗り継いで出身地の村へ帰って行ったということです。インドの人たちはなんとなくこういった政府の思慮を欠いた拙速な政策に馴れているのか、行動が早いし、なんとなく早めに行動している様に感じます。うちのオフィスでも3人は既先週のうちに地元に戻っていて、結果ロックダウンで帰って来れなくなった感じになっています。

インドに生活する外国人としては、彼らのようにインド政府のやり口、体質を読んで機敏に対応するか、若しくは我関せずという態度で、悠々と構えるかどちらかしかありません。日本の様な国は安心安全をモットーにしているので、国民の私権を侵すことは極力せず、事前通知もしっかりしています。対して巨大人口国家+教育水準の低い国+宗教的にも人種的にも多様性のある国家インドは、日本の様に悠長に構えていると、その隙を狙って何をされるかわからないので、電撃的に漬け込める隙のない様政策を実行するのでしょう。また多分にとりあえずやってみろ!という印象も毎回受けます。これはインドという国がやってみないと、どういう結果が出るかわからない部分が多いからだと思います。例えばアメリカのような先進国と比較しても、連邦制で州の権限が強い、多民族国家、国土が大きいという類似点はありますが、インドの方が政治的、制度的にも、また現場の公務員、警察官などの教育水準なども大きく違いますし、また中國と比較しても共産党のように一極集中で有無を言わさず末端までコントロールできるほど国内が統一されていません。

こういったことを考えると電撃的に、まずやってみて、その後様子を見る、各州との調整を図る。という態度になるのもある程度理解が出来ます。

さて日常に戻りますと、ロックダウンは一応のところ成功をしている様に見えます。街に人は出ていませんし、ほとんどの人は自宅待機を守って生活しているようです。

この2週間ほどでニュースで問題になっているのは、出稼ぎ労働者(日雇い)が多く解雇され、何十万人という単位で隣の州や、何百キロも離れた自宅へ歩いて帰ろうとしているという問題と、ロックダウン中にも関わらずシーク教のグルが何千人も信者を集め集会を行い、自らスーパースプレッダーになり、その後死亡する。イスラム教徒もモスクで大規模集会を行い、そこでの感染者が各地に散っていった。ということが記事になっていました。

非常にインド的な出来事だと思いました。不安な時期だからこそ、グルの話を聞きたい、モスクで祈りを捧げたいというのが敬虔な信者としては当たり前の心情なんでしょう。気持ちもわかります。戦争時やテロに対してであれば、人が集まって祈りを捧げることになにも問題はありませんが、感染するウイルスとの戦いは、人の接触さえも断ってしまう。これは非常に彼らにとって矛盾を抱えることになったのではないかと思います。特に貧しく、教育レベルの低い人ほど集まり、直接話を聞きたい、集団で仲間と祈りを捧げたいという欲求が強いような気がします。現在では教会やグル、寺院もオンラインでの説法やミサを行ってるようです。

人が集まり、なんとなく賑やかにガヤガヤと集い、お喋りすること自体が娯楽や文化であるインドが、その一番インド的なものを封じ込められた様で複雑な感じもします。

今後経済的なダメージと検疫、医療のバランスを見て各国が政策や方向を示していくのでしょうが、まずは治療法やワクチンとともにランディングポイントが早く見えてくればいいな、と思います。

21世紀の20年目にしてのウイルスとの戦い。以前、冗談でハリウッド映画のお得意のプロット、人類vsエイリアンという図式は人類が結束して戦うから敵を作らないで世界中で映画が売れる。と人に言ったことがありますが、今、コロナウイルスこそが人類共通の、最大の敵というのは間違いないでしょう。まさに現在のPublic enemy No.1。