森恒二の「自殺島」がかなり良かった。
- 2019.09.05 最終更新日
- 2019.09.08
- 漫画
こんにちはタマオです。
このところ夏バテもあり、ごろごろして漫画ばかり読み漁ってました。
そんな中、ボクの中で”かなり”刺さった作品をご紹介したいと思います。
「自殺島」作者は森恒二。
「ベルセルク」を読んだあと「自殺島」を何気なく読んだのだけど、実は「ベルセルク」の作者、三浦建太郎と森恒二は高校の同級生でマブダチだったらしい。
読み終わったあとで知って不思議な縁を感じました。
でもベルセルクとは物語の内容や世界観は大分違う。
「自殺島」というタイトルからして、最近流行りのデスノートみたいな(全然最近じゃありませんね)バトルロワイヤル系的な人が死にまくるダークな作品なんだろうな〜と思って読み進めたのだけど、最初こそそんな雰囲気なのだが、ぜんぜん違う内容だった。
超古典的ともいえる「人はなぜ生きるのか?」をテーマにした普遍的な真理を追求した超感動作だった。
この作品、タイトルで損をしてると思う。。途中途中で作者の言葉というか想いが物語にフェードインしてくるのだが、まるでインディアンの長老の言葉を聞いてるような錯覚に陥った。
いや〜それにしても面白すぎた。脳内麻薬が出すぎて眠れなくなり、泡盛をあおりながら朝までに一気読みしてしまった。
物語を簡単に説明すると、
自殺常習者たちが、南国の島に集団で「島流し」にされ、
法も秩序もない中、あるものは自ら死に、あるものは殺し殺され、あるものは自ら生きようとし、原始生活さながらの狩猟採取生活にチャレンジし、その苦難の果に、日本の現代社会の生活では得ることのできない何かを得て、「生きる意味」に少しづつ気づいていく物語。かな。
「生きるために生きる」
現実社会に絶望し引きこもりで自殺ばかり繰り返している主人公が、目覚めると知らない島の港にいた。
周りには大勢の人々がいる、リストカットの跡があるものばかり、近くの高い建物からは次々と人が降ってきて死んでいく。
主人公も含め周りはパニック状態。死ぬことも考えるが、パニックの現場からとりあえず逃げる。喉が渇いてるので、よくわからないまま、水を求めて数人で歩き出す。
苦労して川を見つけ渇きを癒す。近くに廃校を見つけ、一日目はここで日が暮れる。
次の日の朝が明けるとグループ内の何人かはもともと自殺志願者なのですでに自殺していた。
飲み物の次は空腹を癒やさなければならない。
近くでバナナの木を見つけるが量は足りない。
グループで話し合いをし、漁をすることにするが、なかなか魚は捕まらない。
一日がかりの苦労の末、皆で協力しなんとか追い込み漁を成功させ、日本の社会で絶望していたときには味わえなかった喜びと充足感を得る。
まさに「食べ物を得るために生きる」つまり「生きるために生きる」生活。
生物にとって至極当たり前の生活なのだが、現代社会で生活を送っていると忘れそうになる「生活」。
と、まあこんな感じで物語は進むのだが、最初の食料採取から始まり、狩り、簡単な農業、牧畜、と皆で頭を使い、ひたすら体を使い、少しづつ安定した生活を得ていくのだが、仲間内での考え方の違いからの派閥争い、女と男のトラブル。ちょっとしたケンカからの人の死、イカダを作り外洋に出たり他のグループとのトラブルや最終的には全面戦争と、ストーリーはどんどん展開し刺激的で全く飽きない。
物語を読んでいくと、さながら原始生活から始まる人間社会の歴史の縮図を一気に見せられているような錯覚に陥ってしまう。
そして物語の人物ひとりひとりが、自殺常習者ゆえのダークサイドを持っており、そのトラウマを克服していく物語でもある。
そして数あるなかでも一番好きなエピソードは、
主人公はあるきっかけから弓の知識を持っており、一人で弓矢を作り、決死の覚悟で一人、鹿を狩りに山へこもるシーン。
このストーリーのくだりがとても良かった。
何日も山にこもった末に鹿を射止め、解体し、食べるシーンがあるのだが、そこがすごく良かった。すごいリアリティのある描写でシビレた。
自分も本気で猟師になりたいと思ってしまった。
作者は実際に山で猟をしてこのシーンを書いたそうだ。
ちなみにスマホだと「マンガPark」というアプリがあるんだけど、
これを使えば、全話無料で読むことができる。
まあ正確に言えば一日に11話無料で読むことが出来るので一気読みしたかったら、有料になってしまうが。
余談だが、この作品の作者、森恒二は三浦建太郎と高校時代しょっちゅう一緒に映画を見に行って、見終わった映画をあれこれ二人で批評していたらしい。
そして、二人とも見終わったあと感動で立ち上がれなくなり、無言で2周目に突入した作品が2つあるそうだ。
それは「スター・ウォーズ」と「風の谷のナウシカ」だそうな。
うーん納得。
とにかく、この作品にはいろいろ考えさせられた。また機会があったら書きたいと思う。
こちらもUPしましたので、よろしかったらどうぞ。
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